異形八話

「お父さん、好きな人ができたの。結婚を前提にお付き合いしていて・・・」
深刻な顔をした幸の唇から言葉がこぼれて行く。夢ではない、現実に俺の前に幸が立っている。
昼過ぎ、台所で珈琲を飲んだ後のことだ。椅子から立ち上がろうとしたところに、幸の告白。
いつの間に・・・、いや、いまはそんなことを考えている場合じゃない、俺はどう答えればいい。何か言わなきゃならない。なんて言うんだ。
まさか、こんな言葉が幸の口から出るなんて思いもしなかった。俺は、俺は・・・。
俺は幸の父親だ。そう、幸の父親なんだ。

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異形七話

窓からの月明かり、瞳はそっと幸の寝顔を見つめた。
幸と瞳はこの十日間、一つの部屋に布団を二つ並べ寝ていたのだ。
明日が、ちょうど、十日目、明日の昼には幸に付き添われ自宅へと戻る予定だった。

瞳は上半身を起こし、そっと幸の顔を覗き込む。
月明かりに照らされた幸の、なんて神々しく美しい、それは人の域を遥かに越えた美だった。

「キスはやめてくれよ。あたしは父さん、一途なんだからさ」
幸は目を開けるとにっと笑った。
「ごめんなさい、起こしてしまって」
「いいさ、こんな奇麗な月を見ずに寝るのはもったいない」
窓からの月は冴え冴えと部屋の中を照らし出す、充分な明るさだった。
幸は立ち上がると、瞳に待ってなと言い残し、台所へ。そして、お盆にマグカップを二つ載せ戻ってきた。

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異形六話

この温泉街の中でも一番の高級ホテル。廊下には、プレートを掲げた重厚な扉が並ぶ。ふと、幸は、何か用事を済ませた後だろう、少し先を歩く仲居に気づき、音をさせず走り寄ると、後ろから抱き締めた。
「あはは、だーれ、だ」
「お、お客様、困ります」
低い声で幸が囁いた。
「なんだよ、寂しいなぁ。あたしの声、忘れたのかよ」
「うっ、うわぁあ」
仲居は腰を抜かし、尻餅をついてしまった。幸は仲居の前に回り込み、にっと笑った。
「やっぱり、あの時の瞳さんだ。元気にしてた」
「は、はい。おかげさまで・・・」
幸もぺたんと廊下に座ると、目を逸らそうとする瞳をじっと見つめた。

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異形五話

ふぅっっ、深呼吸をする。
笑顔、笑顔、口元、そう、頬の上辺りを引き上げるようにして、そうすれば極上の笑みになる。
さぁ、行くぞ。
商店街の入り口、幸はぐっと握り拳を作ると商店街の中へと向かった。

「ええっ、スーパーの方が良いよ、買いやすいもの」
「だめ、幸はね、一人ででも色んな人と会ってお喋りしたり、自分の意志を伝えたり、そういう訓練しなきゃね、いつまでも、お父さんの後に隠れて買い物するわけにもいかないでしょう」
「でも、商店街っていちいち声を掛けなきゃならないし、スーパーなら何も喋らずに買い物ができるし」
「つまりはお喋りしなさいってこと、いいね」

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異形四話

闇の中、男は頭を抱え悩んでいた。
一体なんてことを、俺はしたのか。
それは旅行の夜だった、自分の前に幸を座らせ、その幸の浴衣を脱がしてしまった、滑らかな肌、その時の甘い感触が指に残る、もちろん、父親としてそれは許 される行為ではない、ましてや、幸がいてくれないと生きていけないなどと、幸の心を縛ってしまうようなことを言ってしまった。そうだ、もしも、幸に異変が 起こらなければ、間違いなく、幸を最後まで・・・。
心が不安定だった、それは確かだ、しかし、それは醜い言い訳だ。
幸はどれほど傷ついただろう、幻滅したろう。

「おーい、お父さん、一緒に晩御飯作ろぉ」
襖が開き、幸が男の部屋を覗き込んだ。

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異形三話

「お父さん、もう寝た」
そっと呟く。
枕を抱え、幸はそうろと、男の部屋の襖を開けた。もう一緒の部屋に寝るのは卒業しなさいと男は幸に隣りの部屋をあてがったのだった。
男は心配していた。幸は既に呪術についても、武術についても男の能力を超えていた。
男はそれを素直に喜んだのだが、一つの問題が残ったのだ。幸は変わらず、極度に父親への依存を残していた。慕ってくれる娘はとても可愛い、だが、考えるの は、あの魔物は幸を拘束し、自らの道具として扱った。自分自身はどうなのだ、幸を独立し自我を確立させた一人の人間として育てるべきではないか。今のまま では、俺はあの魔物と対して変わらぬ扱いを幸に為しているのではないか。

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異形二話

「うわぁぁっ、お父さん、お父さん、お父さん」
女の悲鳴に男が駆けつけた。男の税理士事務所兼自宅の一室での出来事だった。
女はぶるぶると震え、部屋の片隅にうずくまっていた。
「大丈夫、もう大丈夫」
男は女を抱き締めた。
「お父さん、お父さん、お父さん、どこ」
「ここにいる、ここにいるよ」
女の荒い息が少しずつ収まり、震えが止まる。泣き濡れた眼差しで男を見上げた。

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異形十話 最終話

花見と言っても、桜の花を愛でるというような風情はない。所狭しと屋台の並んだ先、公園を一歩入れば、満開の桜が青い空をその無数の花びらで見事に遮ってしまう。
しかし、一度、視線を落とせば、ビニールシートの青が辺り一面、賑やかな花見客が持参する小さな空にあちらこちらと埋め尽くされている、まるで、空にいるようなものだ。
男はビニールシートの端に座り、缶ビールを少しずつ飲んでいた。商店街の花見、幸がしばらく前から、週に一度、魚弦で1時間ほどだが、手伝うようになり、そのよしみで男も商店街の花見に参加したのだった。
「先生が来てくれるなんてびっくりだよ」
洋品店の女店主が男の前で笑った。しばらく前に膝を痛め、折り畳みの座椅子にすわっているのだが、それが正座する男の背の高さにあい、ちょうどいい話し相手になっていた。

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異形一話

深夜の街を一人の男を背負った、裸の女が歩く。
雨が降りしきる人通りの絶えた街。
よろよろと倒れそうになりながらも歩き続ける。柔らかな部屋の中でしか歩いたことのなかった女の足は既に血だらけとなり、それでも、歯を食いしばり耐え続ける。
濡れた髪が女の顔を隠す、しかし、微かに覗くその口元には荒れる息と共に笑みがあった。

息が出来ない、心臓がどくどくする。
あぁ、私は生きているんだ。
私に生命を分けてくれた人、この恩、いま返します、これが私の約束。

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なみゆい


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異形

異形 流堰迷子は天へと落ちていく

異形 雨夜閑話

異形 月の竹 眠るモノ

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遥の花 藍の天蓋


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